文字は劣化する…の巻
カリグラフィーは、ご存知の通り「手書き文字」。
「手書き」なので、さっき書いたのと全く同じものを、5分後に全く同じように書くことはできません。
でも、それが「手書き」のよさ。
色が擦れることもある。
同じインクを使ってても、濃淡が出る。
書いている段で、CGでは出せない色合いになることもある。
何より、書いた文字の中に「成長」を見ることができることがある。(「成長」がないこともある…爆←工藤あるある)
それぞれのカリグラファーの方が、それぞれ自分の思いの中で、文字を綴ってはると思うんですね。
工藤には工藤の思いがあって、書き続けています。
一番の「思い」は、カリグラフィーは「表現」だってこと。
ビジネスとかではなくアート。(注を入れるまでもありませんが、作品を売らないとかってことではないですよ)
どこかで書いたことかもしれませんが、自分は、フローリッシュとかはほとんどしないんです。
しないことにしているんではないです^^;
する時もありますので。
アルファベットの持つ「個性」みたいなもの、一つ一つの文字が本来持つ「美しさ」を、どこまでシンプルに引き出せるのか…
それをベースにして、色やらレイアウト等々と掛け合わせをして、伝えたい「文章」を綴って表現をしていく。
結構しんどいことやし難しいってことは分かってはいるんですが、自分のカリのベースは「そこ」に軸足を置いてます。
それもあって、イタリックが多いのかも?笑
と、御託を並べて偉そうに書いてますが、先日、かなりショッキングなことがありました。
Facebookをやっていると、時たま、タイムラインに「〜年前の〜」とかってのが出てくるんですね。
過去とか後ろとかを振り返るってことのほぼない工藤は、大概、「お、懐かし♪」で終わります。
が、先日は違いました。
これ、8年前の作品(だそうです)。
一瞥して、次の瞬間には見入ってました。
自分の作品ながら、何気に引かれるものがある…
実はそれがめちゃくちゃショックやったんですよ…
題材は、芥川賞作家・宮本輝先生(輝先生と呼ばせていただいております^^)の中編「夜桜」(新潮文庫『幻の光』所収)の最後の方の一節の英訳もの。
アメブロには出しませんでしたが、こちらでは載せておきますね。
Hemmed with blue light, the enormous cotton-like clusters of pale pink blossoms seemed to float in the air.
They appeared as a bewitching living organism that would diminish gradually, tricking away.
Since sleep seemed out of the question, Ayako decided to spend this strange night staying up wiyh the cherry trees.
膨れあがった薄桃色の巨大な綿花が、青い光にふちどられて宙に浮いているように見えた。ぽろぽろ、ぽろぽろ減っていくなまめかしい生きものにも思えるのだった。綾子は到底眠れそうにないこの不思議な夜を、桜とともに起きていようと決めた。
工藤、初のギルド展出展作品がこれ。
切り絵とのコラボ作品にしたんですが、こちらの手違いもあって、その切り絵部分が一部破損で戻ってきて、書き直そうと思いつつそのままになっています。
↑の写真は、ここから「切り絵」コラボをどう入れようかと考え中に写メったもの。
で…
何がショックやったかというと(やっと、本題…^^;)
ここに、自分が書いた一つ一つの文字に込めた「思い」の強さとか重さが、まるっきり「今」とは違うってこと。
技量のことではないんです。
「気持ち」の問題。
今月の「母の日」に書いた作品と比べると如実にわかります。
これ、ぶっつけ本番で、下書きも練習もなくて、レイアウトもぶっつけで書きました。
失敗もしてないし、一応見た目も安定してて、特に問題もない…ように見えます。
とりあえず、「夜桜」書いたものよりもベターな文字でもあります。
でも、大きな違いが…
8年前に書いた作品の方が、文字一つ一つに込めた思いの「深さ」とか「熱さ」が強いんですね。
まるきり違うって云うてもいいくらいです。
これが、めちゃくちゃショックでした。
あれから8年経って、文字に対する姿勢というか向き合い方というか、そういうものが確実に劣化している。
それを知ること・理解することができたのは、これはこれで幸いやったと思いながら、今、仕切り直しをしているところです。
一つ云えることがあって。
先月末から、キングコングの西野亮廣さんの voicy 発信やブログ、それからネットサロン(こちらは有料)に接するようになったんですが、特にここ数日のその西野さんの発言やら文章が、今回のこのショッキング事件に連れてきてくれはったって思えるくらいにドンピシャでリンクするようなものが多かったんです。
こんなこともあるんですね。
そのタイミングの妙に、驚きつつ、西野さんに感謝しています。
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